コピーライターの仕事のひとつに、ネーミングがあります。商品の名前や企業の名前を考えて、そのネーミングからコミュニケーションの役割を果たせるようにする。覚えてもらえるように、好きになってもらえるように、商品であればスーパーなどの店頭で手に取ってもらえるようにする。どんな商品にも企業にも(もちろん人物にも)名前があります。名前があってこそ、その存在を知らしめることができるのですね。そんなコピーライターっぽい話が、自分でもウザく感じられてしまう時があります。

先日、こんなお醤油をいただきました。北海道の「増毛(ましけ)醤油」。コメディに関わる仕事をしているSさんからの、僕の毛量に対するハゲましだったのかもしれません。初めて見たそのお醤油のネーミングはインパクト大で、パッケージの裏面を見てみると、販売者は北海道増毛町役場とありました。住所は、北海道増毛郡増毛町。確かにキーボードを「ましけ」と打つと「増毛」と変換されますね。旭川の西に位置するこの日本海に面した町のホームページを見てみると、町民の皆さんの高血圧対策として開発されたお醤油であることが紹介されていました。「ポリグルタミン酸(納豆の糸引きの成分)」を使うことによって減塩でも濃い味に仕上げられているとのことで、さらに増毛町の魚介類に良く合うように味付けされているとのことでした。あらためてパッケージを見ると「35%減塩」や「塩分ひかえめ」と、しっかりと書かれています。

素敵ですよね。町民の皆さんの健康のことを考えて開発された商品が、その目的や製法や特長をそれらしく表現するのではなく、「増毛(ましけ)」というチャーミングで強い町名そのものをネーミングにする。コピーライターが作り出す理屈ではなく、町民の皆さんにも全国の皆さんにも愛される大きなネーミング、とても好きです。僕の毛量とは関係なく、素直に惹かれてしまいました。まずはワカメにかけて、いただいてみようと思っています。ちなみに当店ではお取り扱いのない商品です、念のため。

さて、小さなオンラインストア「アピスとドライブ」の実店舗になる鎌倉店は工事が遅れてしまっていますが、11月上旬(少し延びました)の開店を目指して準備を進めています。当店のネーミング「アピスとドライブ」は、ディレクターの今井が主宰する会社「アピスラボラトリー」と、店主の僕が主宰する会社「ドライブディレクション」の名前を合わせたもの。ネーミングについて語ってきた割には、特に深い意味はなくてスミマセン。(ちなみに「アピス」は、ラテン語でミツバチという意味です。)少しずつ私たちの店名も覚えていただけたら、うれしく思います。
https://apis-and-drive-shop.com/

 

 



店主:後藤国弘

9月 06, 2022 — 後藤国弘