突然ですが、僕には一年に一度(以上のこともありますが。笑)マクドナルドでチキンタツタを食べる日があります。それは、ネーミングというものについて考える日でもあります。

小さな喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」を鎌倉・佐助に開店してからはまだ3年半ほどですが、コピーライターとしてフリーになってからは、もう33年になります。そんな僕が独立する前、20代の後半は岩永嘉弘さんというコピーライターの先生の事務所でアシスタントとして修業生活を送っていました。わかりやすい丁稚奉公です。アシスタントが4人ついていた中で僕は3番目、当時の髪型はソバージュ!でした。後輩のU君からは「後藤さんの方が後から入ってきたのにー」と今でも言われつづけています。笑

師匠である岩永嘉弘さんはコピーライターの仕事にネーミングの地平を切り拓いてこられた第一人者で、日本ネーミング協会の初代会長であり現在は名誉会長を務められています。そんな岩永さんのもとには広告のコピーの仕事だけでなく、当時からさまざまな企業や施設や商品などのネーミングの仕事が入ってきていました。そのひとつが、このチキンタツタのプロジェクトでした。マクドナルドから期間限定商品として初登場したのが1991年の4月でしたので、実際のネーミングに取り組んでいたのは89年か90年のことだったと思います。アシスタントとしての僕はここぞとばかりに攻めたネーミング案を(笑)いや奇天烈なネーミングまでも含めて(汗)目立つことばかりを考えたアイデアを出していました。いかにもダメダメです。そして百を超えるどころかそれ以上の案の中から決定したのが、岩永さんが作られた「チキンタツタ」という極めて強くて大きなネーミングでした。

あれから35年後の今日も「チキンタツタ」という商品(=ネーミング)はあたりまえに存在し、レギュラーメニューになった時期も経ながら、現在では年に一度のキャンペーン商品として人気を集めています。僕のまわりにもファンが多いチキンタツタを今年も美味しくいただきながら、あらためて思うのです。ネーミングという仕事は、けっして変わった名前や悪目立ちをする名前をつけることではないのだと。多くの人に愛されて、親しまれて、そもそも名前のことを意識しないくらい日常の中で普通に使われてこそのネーミングなのだと。だからこそ35年が経っても、少しも古くならないんだなあ。そんなことを考えながら、今年はもう何回かチキンタツタを味わってみようと思うのでした。うちのお店の名前「アピスとドライブ」のことは、また別の機会に。(店主:後藤国弘)

4月 17, 2026 — 後藤国弘