作品集『折り顔』/松尾貴史 作

¥2,000



大阪芸大デザイン科の学生時代から、身近な、ちょっと変わった紙類を折っては遊び、折っては何やら造作に勤しんできました。
画家の安野光雅さんとグラフィックデザイナーの福田繁雄さんが作品集の中の対談で、「もう世界に造形は出尽くしたのではないか、と行き詰まった時に、電車に乗っていたら車内の人が皆違う顔をしている事に気づいて、目と口と鼻の位置が入れ替わることはないのに何十億人も違う顔しかないということから、まだやりようはある」と希望を持った話をなさっていました。それから人の顔の奥深さに興味が湧き、私の創作衝動に油を注いでくれました。
切り込みなどは入れず、正方形の紙を折るだけ。そのシンプルな決まりに俳句のような潔さを感じて、衝動で顔を折っています。どうか、自由にイマジネーションを湧かせて、人面紙の世界を楽しんでいただければ幸甚です。
松尾貴史

松尾貴史プロフィール
:俳優/エッセイスト/折り紙作家/カレー店・下北沢「般゚若(パンニャ)」店主。1960年、神戸市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒。「週刊朝日似顔絵塾」塾長、日本文藝家協会会員、日本ソムリエ協会名誉ソムリエ。読売演劇大賞優秀男優賞(2019年、2022年)、紀伊國屋演劇賞個人賞(2022年)など受賞。

松尾貴史さんとは、もう30年ほどの付き合いになります。俳優であり、ナレーターであり、エッセイストであり、人気カレー店のオーナーであり、落語もやりと、その多才ぶりに惑わされつづけてきました(笑)。
今回、一枚の正方形の紙を使用し、そこに切り込みや切り取りを行うことなく、何者かの顔を折り上げる「折り顔」のアーティストとしての彼の顔を、この作品集を通してご紹介できることを、とてもうれしく思っています。松尾さんは、鎌倉にアトリエも借りられていて、もっともっと多くの顔を折ってくれないかなあと、いつも願っているのです。
アピスとドライブ 店主 後藤国弘

折り顔について
折り顔とは、1994年に松尾貴史によって名づけられたアートの手法です。日本の生んだ美しい伝承文化である折り紙の手法により、人類すべての数がある「顔」を造形的な特徴や表情、世界観まで含めて表現する現代美術の一つです。
折り顔の手法とは、

1:刃物などによる切り込みや切り取りを行わない。
2:正方形の紙一枚を折ったり開いたり膨らませたりして造形する。
この2点がポイントで、あとは自由です。この僅かな制約は、俳句にも通じる自由さです。使用する紙の材質も、和紙、洋紙、コート紙、新聞紙、不織布、プラスチックのようなものなど、創作者の自由な発想でテクスチャーを選択することができます。素材の弾力によって造形が不安定になることを防ぐ糊づけも自由です。
造形のモティーフとなる顔は、有名人、身近な人物、歴史上の人物、想像上あるいは伝説上の人物、限定されないイメージや表情のみなど、すべてにおいて制約がありません。

顔を折り紙でつくる手法のオリジンは、民間伝承の中で生まれたもので、いつ誰が始めたものかは不明ですが、故・吉澤章氏や故・河合豊彰氏らの巨匠による研究・創作が、国際的に大きく影響を与えています。

発売元:古舘プロジェクト
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