『料理発見』/甘糟幸子 著

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野生と知性のひと、台所に立つ。
食べて生きる力の素が、この一冊にぎっしり詰まっている。
平松洋子(作家・エッセイスト)

作家、エッセイストの甘糟幸子さんによる1986年刊行の食エッセイ、待望の復刊。気になった食材や美味しい料理は自ら試さずにいられない。料理への好奇心と情熱にあふれ、料理することのおもしろさを発見させてくれる良書。

◎推薦コメント
生きとし生けるものすべて、食べることから逃れられない。その摂理をわがこととして見つめながら台所に立ってきたのが、甘糟幸子さんである。大胆不敵に挑む牛スジ、シチュー、骨つきラム、極辛カレー、骨つきハム、鳩。あるいは、細心に向き合う葛切り、小籠包、朝茶、百合根。庭に横たわる仔鹿におののいたりもするけれど、でも食べる。料理をつくること、食べることは、そもそも野性ほとばしるエネルギーそのもの。読後、猛然と腕まくりして牛スジを煮たり、ゲンゴローを揚げたくなったりする。平松洋子

◎著者略歴
甘糟幸子(あまかす・さちこ)1934年(昭和9年)、静岡県沼津市に生まれる。早稲田大学第二文学部露文科在学中より雑誌のフリーライターとして活動。1960年(昭和35年)に向田邦子らと女性3人のフリーライター事務所「ガリーナクラブ」を開く。結婚後、1968年(昭和43年)に横浜から鎌倉に移住。1977年(昭和52年)、食べられる野草についての新聞連載エッセイをまとめた『野草の料理』が刊行される。その後も植物をテーマにした『野生の食卓』『花と草木の歳時記』などのエッセイを刊行、いずれもロングセラーとなっている。『白骨花図鑑』など小説も手掛ける。娘は作家の甘糟りり子氏。

◎編集者のおすすめポイント
「目新しい材料に出会うと、体じゅうの神経が活気付いてくる。想像力が湧き上がり、予感に導かれるようにして仕事が進む。忘れていた動物的な感覚がよみがえってくる。」(本文より)食材や調理器具、情報が今ほど充実していなかった1980年代にあって、どん欲かつ感覚的に料理や素材と向き合い、自らの手でクリエイティブに料理を生み出す著者。料理に対する飽くなき好奇心と遊び心、当時の食文化を堪能できます。便利になりすぎ、選択肢があふれている今だからこそ、新たな視点で「料理」を再発見できる一冊。作家・エッセイストの平松洋子氏、推薦!

◎目次
1章 スジ肉発見  ―味のイメージ―
  犬の餌を横どりして
  贋・熊の掌料理
  冬瓜を器に「仏跳牆(フォティアオチャン)」をつくる
  ハヤシライスの復活には牛スジを
  あっさり、上品、鶏スジスープ
  
2章 味との出会い ―話す楽しみ―
  タピオカは神秘の味
  葛切り
  味の記憶、京の滝川豆腐
  ほとばしる熱いスープの秘密、小籠包
  消えてしまったシチュー屋さん
  
3章 季節の味   ―舌の上の暦―
  筍は皮がおいしい
  タコスの解放感
  仔羊中毒になって
  六月の赤いトマト
  汗をふきふき極辛カレー
  朝茶、朝露、いい朝ご飯
  炊きたての熱いご飯にスダチをしぼる
  飯蒸し
  十一月は新そば粉
  百合根は楽しい
  
4章 お菓子の時間 ―遊びの領分―
  真夜中の「白いアジサイ」
  パンの帽子をかぶった魔法の壺焼き
  残り物の白身を使ってフリアンを
  縁日の思い出、ゲンゴロードーナツ
  中津川からの秋のたより、栗きんとん
  イチジク泥棒が作った砂糖漬
  
5章 美味は残酷  ―罪の感触―
  仔鹿は庭に横たわり
  鯉の尾部うま煮
  吸いつく吸盤をはがしてタコの刺身
  鳩を食べるまで
  大きなハムをぶらさげて
  骨までたたく
  
遅れて料理をはじめた幸せ(原書あとがき)
  
復刊によせて
手前味噌で「料理発見」甘糟りり子(解説)

発行日: 2023年3月7日
編集:アノニマ・スタジオ
発行:KTC中央出版
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