『おきざりにした悲しみは』/原田宗典 著
「おれはもうおじさんではなく、おじいさんだ」── 様々な思いをおきざりにして生きてきた長坂誠、65歳。その運命の歯車が或る姉弟との出会いから動き出す。おきざりにされた者など、いない。生きていくかぎり、ささやかでも希望が生まれ、その旅は続いてゆくから。吉田拓郎の名曲にのせて贈る、昭和の香り漂う令和の物語。著者・原田宗典さんのサイン入りです。
16歳の頃から、小説を書いてきました。いつの日か、水のような文体を手に入れたい。その文章で、生きているものを書いてみたい。それは、きっと励ましに満ちた物語で、読み終えた人の胸を一杯にするものになるはずだ。そんな小説を、いつか書き上げてみたい。それから50年、ようやくその夢がかないました。「おきざりにした悲しみは」は、僕にとって夢の小説です。どうぞ読んでみてください。 原田宗典
世界のすべてに見捨てられても、きっと神様は見ている。そう信じたくなる〈奇跡の物語〉です。 原田マハさん(作家)
当店店主の僕はコピーライターでもあり、独立してフリーになるまでの20代後半、岩永嘉弘さんの事務所でアシスタントとして修行生活を送っていました。その同じ事務所の卒業生で、当時から小説家・劇作家・エッセイストとして大活躍されていたのが原田宗典さんでした。憧れの先輩との距離はどんなに時が経とうとも少しも縮まることなく憧れのままで、「後藤さぁ」と原田さんに声を掛けてもらうだけで何というか、しあわせな気持ちになってしまうのです。原田さん6年ぶりとなる待望の新作「おきざりにした悲しみは」は大好きな吉田拓郎の歌や、最近父親を亡くしたばかりの僕の人生にもドンピシャで重なってきて、おこがましいのは承知の上ですが原田さんご自身の姿にも重なってきて、泣きました。希望をもらいました。装丁は原研哉さん、挿画は長岡毅さんによるものというのもこの物語と相まって、もうたまらなくて。多くの人に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。 後藤国弘(当店店主)
原田宗典(はらだ・むねのり)
1959年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1984年に「おまえと暮らせない」ですばる文学賞佳作。主な著書に『スメル男』(講談社文庫)、『醜い花』(奥山民枝 絵、岩波書店、2008年)、『やや黄色い熱をおびた旅人』(岩波書店、2018年)、『乄太よ』(新潮社、2018年)、『メメント・モリ』(岩波現代文庫)、訳書にアルフレッド・テニスン『イノック・アーデン』(岩波書店、2006年)がある。
発行所:岩波書店
2024年11月8日 第1刷発行
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