海の家のラーメン
お久しぶりのブログです。鎌倉・佐助にお店を開いて、初めての夏が過ぎました。まだまだ暑い日が続いていますが、朝夕の風の中には少しずつ秋の気配が増えてきています。さて、喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」がある佐助は谷戸と呼ばれる丘陵地に囲まれた地域なのですが、そんな山を感じる場所から由比ガ浜の海まで(ちなみに江ノ電の駅名は「由比ヶ浜」で、海水浴場は「由比ガ浜」と表記されます。)自転車だと10分かからないくらい、歩いても30分かからないで行けるという山と海の近さが鎌倉の日常なんだなぁと実感できていることが、海なし県の信州で生まれ育った僕には、とてもとてもうれしくて。
それは、7月の初めのこと。馴染みのお蕎麦屋さんで大将から「後藤さん、もう海の家には行きました?」と聞かれたので「いえ、まだです。ラーメンの美味しいところがいいなぁ。」と聞いてみると、おすすめの店を教えてくれました。翌朝9時には、その海の家で生ビールとラーメンを注文している僕がいて。そこは砂浜から小上がりのお座敷スタイルになっていて、隣の席には僕よりも先輩だろう地元のオジサン二人組みが、朝っぱらから生ビールで乾杯していました。今どきの海の家は企業がスポンサーになっていて妙に賑やかだったり、なんというかイケイケの雰囲気があったりでどうも苦手だったのですが、その海の家は由比ガ浜に一軒だけ残ってくれていた、オジサンたちにとっても楽園だったのです。笑
ラーメンは(いい意味で)なんてことのない薄めの醤油味で(いい意味で)盛りつけもゆるくて(いい意味で)具も少なめで(いい意味で)普通な感じで。ラーメンだけじゃなく、焼そばやモツ煮も(いい意味で)落ちつける味なのでした。いつもは朝か夕方の空いている時間にサクッと行っていたのですが、最終日の8月31日は夜まで満席で。仲間たちと集まって、名残惜しい時間を過ごしました。店員のお兄さんとの「来年、また会いましょうね。」なんていう会話にも、思いもしなかった寂しさが込みあげてきて。もし一人で行っていたら、泣いてしまっていたかもしれません。大げさですね。
当店を鎌倉・佐助に開店して初めての夏に、海の家のラーメンの底力(ただ自分が好きなだけという話でもありますが。笑)を、あらためて感じることができました。喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」も、誰かにとっての(いい意味で)海の家のラーメンのような存在になれるといいなと思っています。なんてことなく、普通に、落ちついてもらえる場所になれますように。
コピーライターの仕事をしている僕は、ちょうどフリーになった30年ほど前に放映されていたJR東海の東海道新幹線のテレビCMを思い出します。「海で食べるラーメンは、どうしておいしいのかなあ。」というナレーションに、もう深く頷くしかなかったのでした。ということでここで告知をさせていただきますが、9月15日(金)から鎌倉・佐助の喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」にて『広告コピーの展覧会』の第1回「コロナの時代のコピー展」を開催いたします。僕も1997年入会の会員であるTCC(東京コピーライターズクラブ)にご協力をいただき、喫茶ギャラリーとしての当店を開店した時からやってみたかった企画で、業界の人じゃない皆さんにも広告のコピーに触れる機会を少しでも増やすことができたら、うれしく思います。秋の鎌倉散策のついでにでも、観に来てくださいね。
https://apis-and-drive-shop.com/pages/copy-exhibition-1
店主:後藤国弘