とてもとてもお久しぶりのブログで、すみません。当店の店主であると同時に、フリーのコピーライターという仕事を30年以上つづけている僕の極めて個人的な企画である『広告コピーの展覧会』のお話です。ちょうど一年前の春に開催した第2回「糸井重里と仲畑貴志のコピー展」には、思った以上に若い皆さんにご来場いただきました。糸井さんと仲畑さんのコピーと、僕も所属するTCC(東京コピーライターズクラブ)の会員の皆さんが書かれた文章を読んだ後、グッタリされている姿が印象的でした。「読む展覧会」だったこともあるのですが、コピーと文章の熱量に当てられたのだと思います。糸井さんも仲畑さんも観に来てくださり、糸井さんは「みんなの率直な物語が見えてきて、本当におもしろかった。」と、仲畑さんは「小さい会場だけど、深度のある展覧会になっているな。」と言っていただき嬉し過ぎる気持ちの中で、第3回は眞木準さんのコピー展を開催しようと決めたのでした。

そこで「眞木準のコピー展」です。眞木さんに初めてお会いしたのは35年以上前のこと、20代前半だった僕は当時の雑誌『広告批評』が主催する「広告学校」に通っていました。東京タワーの足元にあった会場で、眞木さんからも直接コピーを教わることができました。僕にとって眞木準さんは、その全てがカッコいいコピーライターで。そしてカッコいいまま、あの黒い服で、16年前に突然に去っていかれました。

あらためて眞木さんのコピーに向き合ってみると、多くの人の日常の中にまで入り込んでいることに気づくのです。家族みんなで北海道旅行に来た空港で「でっかいどお!北海道!」と叫んでいるお父さん。コピーが題名になったテレビドラマ「恋を何年休んでますか」を毎週楽しみにしていたお母さん。洋服屋さんで「きょ年の服じゃ、恋もできないから。」と、なぜか言い訳をしていた娘さん。会社の飲み会で「飲む時は、ただの人じゃけんのォ。」と菅原文太の真似を頑張っていた部長さん。四十才になったオジサンは「まだ、二度目のハタチだから。」と自分自身に言い聞かせていました。それぞれが眞木さんのコピーを自分の言葉として普通に使っている、その凄さを想うのです。これらのコピーも展覧会でご紹介させていただきます。

今回も40名以上のTCC会員の皆さんにご協力いただき、眞木さんのコピーについての素敵なご寄稿をいただきました。皆さんの文章が本当に最高で。準備の段階から読ませてもらいながら、もうグッと来たりジーンとしたりで、どうか多くの方々に観に来ていただけますように。ちなみに上の写真は、眞木さんの著書『一語一絵』(宣伝会議 刊)と『眞木準コピー新発売』(六耀社 刊)で、会期中は会場でもお読みいただけます。あの頃を思い出したいのではなくて、今だからこそ。コピーだけの展示になりますが、広告の言葉なのにオシャレな眞木さんのコピーから、皆さんの文章から、そこにある何かを感じていただけましたら幸いです。4月4日から5月6日まで。とてもいい季節の鎌倉・佐助で、お待ちしています。 (店主:後藤国弘)

4月 02, 2025 — 後藤国弘