作家の井上ひさしさんは旅立たれるまでの20年間、ここ鎌倉・佐助の地で暮らしていました。今から4年前、2022年の秋に小さな喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」を開店した私たちは、この場所で、奥さまである井上ユリさんと幸せな出会いをさせていただくことになります。人の出会いの不思議さを想うと、もうそれだけで温かな気持ちになれることが有り難くて。それ以来、回覧板を回し合ったり、お裾分けをし合ったりと、日頃から本当にお世話になっています。

井上ひさしさんが遺された「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことは、あくまでゆかいに。」という名言は、フリーのコピーライターという仕事を33年つづけている私自身も心の支えにしてきた言葉で、それは多くの人たちの胸にも刻まれているのではないでしょうか。

今年も10月に鎌倉を中心に開催される文化の祭典「詩をフェス」で、うちの店では彼が生涯、愛してやまなかった同じ東北出身の宮沢賢治について、井上ひさしの眼差しを通しての展示を行うほか、井上ひさしによる歌詞なども展示させていただきます。国民学校六年生の井上少年が人生で初めて買った書物こそが、宮沢賢治の「どんぐりと山猫」でした。「それを読んで以来、ずーっと賢治に狂い続けていた」と、彼はエッセイの中にも書いています。宮沢賢治の詩や言葉を、井上ひさしはどう感じ、どう受けとめていたのか。その眼差しの先で、宮沢賢治の詩や言葉が、やさしく、ふかく、おもしろく、まじめに、ゆかいに見えてきましたら幸いです。そして、「ひょっこりひょうたん島」や「ムーミンのテーマ」や「ひみつのアッコちゃん」など、誰にとっても懐かしい、井上ひさしによる歌詞にも触れていただけたら、とてもうれしく思います。10月2日(金)〜31日(土)の金土日祝の11時〜17時、入場無料です。井上事務所のご協力をいただき、言葉だらけの展示になりますが、秋の鎌倉散策にちょうどよい季節です。どうぞお出かけくださいませ。

上の写真は、井上ひさしの戯曲「イーハトーボの劇列車」と宮沢賢治の童話集「注文の多い料理店」。この二冊の関係性が好きです。言うまでもありませんね。本展の開催にあたり、あらためまして、井上ユリさん、井上事務所の小川未玲さん、お声がけいただいた「詩をフェス」の発起人であるカフェ エチカの千田哲也さん、実行委員会の皆さんに感謝いたします。https://apis-and-drive-shop.com/pages/inouehisashi-to-miyazawakenji(店主:後藤国弘)
9月 26, 2026 — 後藤国弘